りすたと!

リスタートするための第一歩。

『暗殺教室』は究極の『金八先生』か

暗殺教室』というマンガが流行っているらしいことは知っていました。
そのタイトルからちょっと気になってもいました。
「おいおい、ずいぶんと物騒なマンガだな」と。
内容は全く知らなかったので、このたびアニメ化されたのを良い機会と、初回を録画してみました。

奇妙な設定。タイトルとは裏腹に

想像とちょっと違う。
シリアスものかと思っていたけれど、どうやらコメディーっぽい。

この作品は奇特な設定が特徴的です。
とある教室に、触手をもったタコみたいな怪物が先生としてやってくる。
その怪物はすでに月をぶっ壊しており(!)、地球の軍隊では太刀打ちできず、地球にとって大変危険な存在。
しかも、怪物は「地球の破壊」を宣言しているが、公表されてはおらず当局のみ知るという状況。

ところが、この怪物はなぜか、ある高校の別校舎で孤立した落ちこぼれクラスにて「生徒を教える」という条件でやってくる。

さらに、生徒たちは、当局から事情を説明され、この怪物を「暗殺してくれ」と依頼される。成功者には100億円の報酬を出すと。
どのみち、地球の破壊が迫っている。生徒たちはその状況を受け入れる。

――と文字で概要を書くとシリアスだけれど、切羽詰まった感じはまるでない。

第1話冒頭で、教壇に立った先生(怪物)に向かって、生徒たちが一斉にマシンガンの銃撃を始める。
しかし、この先生(怪物)は、マッハ20で動ける(!)ため、いとも簡単に弾を避ける。
これらの武器はすべて当局によって開発され、生徒に与えられたもので、この怪物にのみ有効(人間には無害)な武器というなんともSFな設定。

どんなに殺そうとしても殺せない、ということで「殺せんせー」と名付けられた怪物は、
「地球の破壊」をするけれど「生徒を教える」という矛盾をはらみつつ日々を過ごしていく、といった内容のマンガらしい。

この第1話を観て、もしかして『金八先生』か?という予感がしました。
殺せんせーは「振り切った先生像」を体現しているのではないかと。
そして第2話を観て、それはほぼ確信に近いものになりました。

究極の『金八先生

殺せんせーはとても丁寧で穏やかな口調で語ります。
本当は地球を破壊するような超凶暴なんだけど、見かけ上は優しい印象。しかもお茶目さんです。

第2話で、ある夢を持っている生徒が悩んでいるところに、殺せんせーが近づき、アドバイスします。
この生徒は、殺せんせーの言葉で少し前向きになります。
このように、生徒に悩みがあったら、殺せんせー独特の方法で解決に導いていくというパターンが続いていくのかなと思いました。

殺せんせーは、「君たち(生徒たち)と真剣に向き合うことは、地球の終わりより重要なのです」 と言います。

人間はどうしても完全ではない。
先生だってミスを犯すし、判断を誤る。

殺せんせーはどうか。
完全な終了(地球の破壊)はこの怪物のさじ加減次第。軍隊すら敵わない、明らかな絶望がある。
ある意味、殺せんせーの暗殺は生徒たちにとって生きるための目標です。この課題をクリアすることが生きることにつながります。
「先生を越えて行け」と言わんばかりの設定です。このマンガは「先生を殺せ(殺せるならね)」なんですけど。

普通、先生は生徒の人生に深く踏み込みません。
あくまで、学力向上・進学就職のアドバイス、規律ある生活指導はするけれど、生徒にどれだけの影響があるのか。
一方殺せんせーは、すでに生徒たち(を含む地球の)命を握っているわけですから、圧倒的な影響力があります。
「圧倒的な影響力がある先生」の登場に、生徒たちはこれからどのように影響を受けていくのでしょうか。

私は『金八先生』世代ではないのでよく知りませんが、よくある昔のドラマこんなのでした的な番組で、武田鉄矢扮する金八先生が生徒ひとりひとりの名前を呼んでいたシーンがあったかと記憶しています。
このアニメのオープニングには、生徒ひとりひとりの名前がテロップ表示されます。
初めて観た時には変なオープニングだなと思っていたのですが、第2話を観終わった今では、こんなところも共通点なのかなと思っています。

メメント・モリの先に

物語の中で「優越感を感じる大半の生徒」と「落ちこぼれクラスの生徒」という対比があります。
しかし、当局の担当者は彼らを見て、殺せんせーと触れ合っている「落ちこぼれクラスの生徒」のほうが良い表情をしている、生き生きして見えるという発言をします。

生徒たちに切迫感がないというのが現実感の薄いところ。
これはあえて意識していそう表現しているのかは分かりません。

成長途中の青少年はどこか虚無的というか現実感のない社会を生きている。
だから、大半の生徒たちの表情が曇っている。
そこには、生きている感覚が乏しい。

ここに殺せんせーという「死」の代名詞がやってくる。
「死」を身近に感じるからこそ人生が輝く。まさにメメント・モリ(死を思え)です。
なかなかに無理のある設定ですが(苦笑)、殺せんせー=死を思いながら日々を過ごすことで、生徒ひとりひとりの人生が変わっていく様が描かれる気がします。
今後の展開はきっと生徒ひとりひとりの成長譚につながる話だと思っています。

生徒たちは、殺せんせーの情報を収集し、トライアル・アンド・エラーを繰り返していく。
それは生徒同士、あるいは生徒たちと先生がコミュニケーションをとってお互いを知っていき、殺せんせーを暗殺することが生徒の成長するイニシエーション(通過儀礼)となるのではないか、そう考えます。

その時、このマンガにはどんなラストが待っているのか、とても気になります。

殺せんせーの目的

第2話までの情報しかないので、これについてほとんど語れません。
「誰かと約束をしたから、生徒に教える」ということをしている模様なのですが、それを思い起こさせる殺せんせー目線のフラッシュバックシーンをコマ送りで確認してみましたが意味不明でした(焦)。
きっとこれから明らかになっていくのでしょうし、物語の推進力として機能するはずです。

その約束がどうあれ、このストーリーは生徒がいかに困難な壁や悩みを越えていくかにあると思うので、それを見失わないかぎり、この作品は面白いものになっていくと思います。

暗殺教室 1 (ジャンプコミックス)

暗殺教室 1 (ジャンプコミックス)

青春サツバツ論 (CD+DVD)

青春サツバツ論 (CD+DVD)