りすたと!

リスタートするための第一歩。

山田孝之が投影する「桃太郎の敵」

話題を振りまいてきたドキュメンタリー『山田孝之東京都北区赤羽』。
やはり、元に戻る結末になった。
でも、この「元」は、山田君にとって決して「元」ではないのが面白いところ。

役者はこれからもやり続ける。
だけど、役者の質が変わっていくかもしれない。

映像では、これまでの苦悩が語られていた。
10代から役者をやってきて、突っ走ってきた彼が、ある時現実と役との境目が分からなくなってしまった。
迷走というか壁にぶつかるというか。
その記録という意味で、珍しいドキュメンタリーになっていました。

たった1~2か月の夏の話だけど、最初の頃の山田君の目や表情はちょっと心を病んでいるような感じだった。
だけど、クライマックスの桃太郎の芝居をやっている頃にはその影は潜め、生き生きとした表情になっていた。

彼が脚本を書いたであろう桃太郎の解釈。
結局、敵は自分自身の中にあった、という答えを彼は見出した。心の中にあった闇のようなもの。
それに気づかせてくれたのが赤羽やその仲間たちであり、それを胸に生きていこうという決意表明なのだろうなぁと思いました。

これはめでたしめでたしの話ではなく、いつまたぶり返すかどうかは分からない。

役者は狂気。
それをコントロールできるのか。したほうが良いのか。
ヒース・レジャーの例を挙げるまでもなく、プロフェッショナルと狂気は紙一重。

今後日本を代表するであろう稀有な俳優なだけに、陰ながら応援したいと思います。